法学検定試験

2025年度 ベーシック〈基礎〉コース 講評

 

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 【法学入門】

問2
 日本法における「規則」に関する以下の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1.地方公共団体の長が制定する法は、法形式として「規則」という名でよばれる。
2.衆議院および参議院の議院規則ならびに最高裁判所規則の制定権限は、行政機関の発する「規則」と同様に法律の定めるところにより、各議院と最高裁判所に与えられている。
3.国の行政機関が定める法形式には、大きく分けて「命令」と「規則」があり、「規則」よりも「命令」のほうがその効力において優位する。
4.行政機関が定めた法令の名称が、「規則」という語で終わっているとき、その制定法の法形式は規則である。


正解:1

〔講評〕

 本問は、「規則」という用語および法形式の理解を問う問題です。正解は1で、地方公共団体の長が定める法は、法形式上「規則」と呼ばれます(自治15条1項)。衆議院・参議院の議院規則および最高裁判所規則の制定権限は、法律でなく憲法により与えられます(よって、2は誤り)。府や省の外局である各種の行政委員会や庁などが発する「規則」は、行政機関による「命令」の一種なので、この意味での「規則」よりも「命令」のほうが優位するとは言えません(よって、3は誤り)。また、行政機関が定めた法令の名称の末尾が「規則」であっても、例えば「一般社団法人等登記規則」が法務省令であるように、法形式として「規則」でない場合があります(よって、4は誤り)。

 

問7

 法の解釈に関する以下の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1.法の文言の解釈に際しては、その文言を選択した立法者の意思を探究する解釈手法が最も妥当であるから、その探究が不可能であるまたは著しく困難である等の特別の事情がない限り、その他の解釈手法を用いるべきではない。
2.縮小解釈は、法の文言の適用範囲を狭める手法であり、その対象となる法の実効性を弱める働きをもつものであるから、国家の最高法規である憲法を解釈するにあたっては、採用すべきではない。
3.類推解釈は、法の適用をその文言の範囲を超えて拡大する機能を有するものであり、罪刑法定主義の妥当すべき刑法の解釈においては、被告人の不利に用いてはならないが、被告人に有利な規定を類推適用することは許されうる。
4.文理解釈は、法の文言を通常の意味に理解する手法であるが、特有の論理や専門用語が用いられることの多い法学においては、内容の理解が特に容易な法文を解釈する際にのみ例外的に用いられる。


正解:3

〔講評〕

 本問は、法の解釈手法についての基礎的な理解を問う問題です。正解は3で、被告人に有利であっても無制約に類推解釈が許されるかは議論の余地はありますが、国家の刑罰権行使から個人を保護する罪刑法定主義の趣旨に照らして、被告人に有利な規定を類推適用することは基本的には許されうると考えられています。これに対し、立法者意思の探究は法の解釈における一つの手法に過ぎず、他の解釈手法に比して少なくとも無条件に優越するものではなく(よって、1は誤り)、また、憲法の最高法規性は、憲法の解釈における縮小解釈の排除を一般的に要請するものではありません(よって、2は誤り)。さらに、文理解釈は法学においても基本的な解釈手法であり、法学の専門性によってその活用が一般的に制限されるようなものではありません(よって、4は誤り)。

 

 

 【憲 法】

問3
 外国人の人権享有主体性に関する以下の記述のうち、誤っているものを1つ選びなさい。
1.判例によれば、憲法の人権保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶ。
2.判例によれば、外国人の在留中の政治活動を、在留期間更新の際の消極的事情として考慮することは許されない。
3.生存権は、各人の所属する国家によって保障されるものであり、外国人には保障されないのが原則である。
4.選挙権は、国民主権の観点から、国政選挙においても地方選挙においても、外国人には保障されない。

正解:2

〔講評〕

 本問は、外国人の人権享有主体性に関する基礎知識を問うものです。正答は肢2なのですが、過半数の受験者は肢3を選択し、また、肢4を選択した者も多くいました。
 肢3については、各人の所属する国家によって保障されるものであるとする伝統的な考え方から、生存権が権利の性質上、外国人には保障されないことは通説となっています。また、判例も、憲法25条1項の生存権ではなく、それを具体化した生活保護法における「国民」の文言の解釈についてではありますが、「国民」とは日本国民を意味し、外国人は含まれないとしています(最判平26・7・18訟月61・2・356)。
 肢4については、選挙権も、国民主権原理とかかわるという権利の性質上、外国人には保障されないと考えられています。ただし、地方選挙においては、法律によって選挙権を付与することは可能であるとする許容説が学説上は有力です。最高裁も、外国人地方参政権事件(最判平7・2・28民集49・2・639)において、選挙権の保障は権利の性質上日本国民のみを対象とし、在留外国人には及ばないとしつつも、憲法が地方自治を保障していることを踏まえ、永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係をもつに至ったと認められるものについて、法律をもって地方選挙権を付与することは憲法上禁止されないとし、傍論ではありますが許容説をとっています。
 正答の肢2については、確かに、政治活動の自由は権利の性質上、外国人にも保障されると考えられていますので、政治活動をしたことをもって在留期間更新の際の消極的事情として考慮することは許されないようにも思われます。肢2を選んだ受験者はこのように考えたのかもしれません。しかし、マクリーン事件(最大判昭53・10・4民集32・7・1223)で最高裁は、外国人には入国・在留の権利がないことを理由に、外国人の人権保障は「外国人在留制度のわく内で与えられているにすぎない」とし、人権として保障されるはずの活動を理由に在留期間更新を拒否することも許されるとしました。つまり、在留の許否との関係では権利性質説の考え方は及んでいないとも言えます。

 

 

 【民 法】

 2025年度法学検定ベーシック<基礎>コース民法の問題について、ここでは,正答率が1番低かった問題19と、3番目に低かった問題10(いずれも問題集には載っていない問題)を取り上げて講評します。

問19
  親族関係に関する以下の記述のうち、誤っているものを1つ選びなさい。      
1.AとAの配偶者Bとは、1親等の関係にある。
2.AとCとの間で養子縁組が成立した。この養子縁組により、AとCとの間に、血族間におけるのと同一の親族関係が発生する。
3.AとAの父の姉Dとは、傍系血族の関係にある。
4.AとAの祖母の弟Eとは、4親等の関係にある。

 
正解:1

〔講評〕

 正解となる選択肢1は、配偶者間では親等を数えないということに反しており、誤りということになります。この選択肢を選び取ることができた受験生は31.1%にとどまりました。基本的な知識であり、問題集に掲載された問題98の解説にも書かれている事柄ですから、もっと正解率が高くなることを期待していた問題でした。
 なお、選択肢4を選んだ受験生が34.8%で、正解肢を選んだ受験生よりも多くいました。これも、「共通の祖先まで世代をさかのぼったのち、世代を下る」という数え方の基本を押さえていれば、間違えることのないものだと思います。問題集で学習する際には、ぜひ解説もよく読んで、知識を広げてください。
 

問10
 Aは、Bに対し、売買契約に基づき動産甲の引渡債務を負っており、その期限を過ぎてもなお引渡しをしなかった。この場合において、Bがとりうる手段として認められることがないものを1つ選びなさい。
1.裁判所に対して履行の強制を請求すること。
2.Aに対して、甲の引渡しについて担保の提供を請求すること。
3.Aに対して損害賠償を請求すること。
4.売買契約を解除すること。


正解:2

〔講評〕

 債務者が債務を履行しない場合、債権者がとることのできる手段は、履行の強制(民414条)、損害賠償(民415条)、解除(民541条・542条)の3種類があります。これに該当しない選択肢2を選び取る問題でした。債務不履行に関する基本的な問題でしたが、正解率は半分にわずかに満たない程度までしか伸びませんでした。
 問題集には、それぞれの制度についての問題があるところ、制度を横断して債務不履行における効果の全体像を整理するところまで学習ができていない受験生が半数を超えているということなのかもしれません。問題集をベースに、解説もしっかりと読み込んだ上で、複数の制度の関係にも目を配った学習を心がけてもらえればと思います。

 

 

【刑 法】

問7
 以下の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1.Xは、Aに無断で、Aから借りている自動車の売却を自動車屋に持ちかけた。Xには、委託物横領罪の未遂罪が成立する。
2.Xは、フロントガラスを割る意図で、Aの自動車をめがけて大きな石を投げたが、命中しなかった。Xには、器物損壊罪の未遂罪が成立する。
3.Xは、Aが居住する一戸建てを囲む塀をよじ登ろうとした。Xには、住居侵入罪の未遂罪が成立する。
4.Xは、Aにケガをさせる目的で、Aをめがけて大きな石を投げたが、命中しなかった。Xには、傷害罪の未遂罪が成立する。

 

正解:3

〔講評〕
 本問は、未遂犯に関する問題です。すべての犯罪の未遂が処罰の対象となっているわけではなく、「未遂を罰する場合は、各本条で定める」とされ(刑44条)、処罰規定がある場合にのみ、未遂は処罰されます。刑法典では、多くの場合、各章の末尾のほうに置かれています。例えば、殺人罪の未遂が処罰されるのは、「第199条……の罪の未遂は、罰する」(刑203条)という規定が置かれているからです。
 意外に思われるかもしれませんが、傷害罪(刑204条)については、こうした未遂を処罰する規定が刑法典には置かれていません。「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかった」ときは、暴行罪(刑208条)が成立します(本肢の事例では、たとえば石がAの体の近くを通過した場合、暴行にあたる可能性があります)。したがって、多くの方が肢4を選ばれましたが、この肢は誤りです。横領罪(刑252条)や器物損壊罪(刑261条)についても、未遂を処罰する規定は置かれていませんので、肢1および肢2も誤りです。これに対して、住居侵入罪(刑130条)には、未遂を処罰する規定が置かれています(刑132条)。本肢のように、一戸建てを囲む塀をよじ登ろうとした段階で、同罪の実行の着手(刑43条)は認められるので、住居侵入罪の未遂は成立します。したがって、肢3が正解です。
 どの罪の未遂が処罰されるのかについて、すべてを暗記する必要はないですが、本問でとりあげた犯罪をめぐる未遂の可罰性については、基本的な知識として頭に入れておくとよいでしょう。

 

 

 

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